2019.冬コミ新刊サンプル

ゲオカイ *R-18
ゲーム本編開始前。密かにお互いへの好感を抱き続ける、両片思いな二人の話。

真夜中の太陽宮。その自室にてゲオルグは思いに耽る。
カイルに、彼の貴重な時間を自分が奪ってしまって申し訳ない。と、先日に語った。
『今まで気にしてくれてたんですか? 大丈夫ですよー。オレはいつだって、自分が一番したいと思う事をしているだけですから』
例えこちらを気遣うだけの言葉であったとしても、嬉しいと思わずにはいられなかった。
『不思議なんですよね。あなたは嘘だと思うかもしれないけど……オレ、ゲオルグ殿と過ごすのが好きみたいです』
今の言葉によって更にその思いが強くなる。
この男は、自分を調子に乗せていた。人のせいにするつもりはない。あくまで自己判断のうえ、カイルはゲオルグが思う以上にこちらを気に入ってくれていると考えていた。後に心を痛めてもいい。ほんの少しでも幸せな思いに浸れるなら、それで良かった。
正直、この感情が本当に恋慕であるのかと何度も考える。それでも気持ちは変わらなかった。あの男には到底、理解出来ないだろう。同性、異性などの話は二の次だ。カイルという人そのものにゲオルグは惹かれている。
『ゲオルグ殿って、不思議な人だなー』
彼にかけられた言葉を思い出す。こちらも同じく考えていたと話せば、あの男は驚きを露わにする。
『えー。そんな風に言われたの、初めてですよー?』
その言葉に驚いたのは記憶に新しい。本当に無自覚なのか、その振りをしているだけなのか。どちらとも取れる反応は彼らしかった。
『そっかー。ゲオルグ殿にとって、オレはそんな風に見えてるんですねー』
穏やかに語る様子からは、それほど不快には感じていないとわかる。しかしそれは、あくまで今見ている表情のみで察していた。この瞬間も彼の心境は計り知れない。それでこそカイルだと思い、この淡い思いを密かに大事にしていこうと決める。
今日は当人と城下町の見回りに向かう。初めての仕事だったので、今回はカイルが同行してくれる。フェリドの意向に感謝した。何故、彼を選んでくれたのか。わきあがる嬉しさは心の底に留め、それとなく訊ねた。
『おまえさんと奴は、馬が合う。それは自覚しているだろう?』
否定する必要もないので、頷けば彼は嬉しそうに笑んでくれた。フェリドはゲオルグとカイルを兄弟のようだと語る。彼のような弟なら大歓迎だと笑いながら言葉を返した。
本当の想いには旧友も気付いていない。隠し通す自信はあったが、実際にそれを感じられて安堵する。あとはカイル本人に悟られないように注意するだけだ。
気持ちを新たに引き締めた直後、自室の扉を叩く音が聞こえる。元々浮かれていた心が更に上を向いた。入口まで早足で歩み、扉を開ける。
「こんばんはー」
声を潜めて語るその様子は、まるで子供のような無邪気さを感じさせた。これが任務ではなく彼と何処かへ出掛けるだけであったら、どれほど嬉しいか。ふと、そのような考えが浮かぶ。
あまりに贅沢過ぎる欲望だ。現に、こうして二人で仕事が出来るだけでも幸せだというのに。調子に乗って欲張ってしまうのも気分があまりにも良い故なのかもしれない。
「わざわざ、迎えに来てくれたのか」
思いを相手に悟られないよう、注意しながら語る。
「そりゃそーでしょ。こういうのは、オレが率先して動かなきゃ」
フェリドから与えられた任務を真っ当にこなすためと、聞かずとも理解出来た。
それもまた、彼らしいと感じる。そんなカイルが何処か楽しそうにしているのは、少なからず自分と過ごす時間を快く思ってくれている故。これは決して、自惚れではないはずだ。もし、自分が彼の敬愛する男の友人でなかったら。きっと、ここまで好意的には接してくれないだろう。ふと浮かんだ悲しく後ろ向きな考えは、早々に心の奥底へしまい込んだ。
「それじゃ、行きましょーか。ゲオルグ殿の、初めての夜勤」
「あぁ、よろしく頼む」
カイルが笑顔のままでいる様子から、心の乱れは上手く隠せていると確信した。

夜の城下町を、そろそろ一通り回り終える。とても名残惜しい。抱いた思いは、本物だと認める。
「良かったー。今日は何事もなく、平和に済んだー」
背伸びをしつつ、心から安堵した表情でカイルは語った。その言葉の意味を、ゲオルグは知っている。自分がこの国に招かれた理由を、フェリドから全て聞いた。
この国は、いつ内乱が起きてもおかしくない。王家に不満を抱く者たち、王家を敬う者たちの間で既に小競り合いが何度も始まっている。今日は幸い、それを止める必要もなかった。静かで穏やかな夜だ。
「毎日、こんな感じだったらいいのになー……」
「そうだな」
「はい。同じ国に住んでいる人たちなんだから、お互いもっと仲良くするべきだって思うんですよー」
太陽宮に戻る道中、相変わらずの軽い雰囲気でカイルは語っていた。しかし。
「でも。そうはいかないんですよね……」
彼は表情を一変させ、何処か諦めたような面持ちで呟く。見慣れない顔に驚き、不覚にも釘付けとなってしまいそうだった。
「あっ! ごめんなさい! つい、グチっぽい言い方になっちゃいましたー」
「構わん。取り繕う必要はない」
「そんな言い方したら……もーっと、甘えちゃいますよ?」
当初の慌て様から恐らく、カイルは他者に己が秘めた思いの一部を初めて表に出したのだと判断する。ゲオルグは率直な嬉しさを感じていた。
「俺は、その方が嬉しい」
抱いた思いをそのまま口にすれば、彼は驚きを露わにする。
「あなたは、とことんオレを甘やかしたいみたいですね……」
「あぁ。おまえは軽薄を装い、誰よりも周りへの気遣いを怠らない。息抜き出来る場所が必要だ。俺は、カイルの心が休まる場所で在りたい」
これを機に普段から抱いていた思いを口にする。同性に言われても、あまり嬉しくはないだろう。それでも伝えたかった。こんな機会は、そう簡単には訪れない。
今なら話の流れで言ってしまっていいと判断した故だ。
「あ……ありがとう、ございます」
重過ぎる言葉だと苦笑される。そうとばかり考えていたが、予想は覆された。カイルはそれまで以上に驚き、頰を赤くしている。彼につられて自分も気恥ずかしくなり始めた。
「あぁ……気にしなくていい」
「もー! 自分で言っておいて、照れないで下さい!」
わずかな動揺が声に乗ってしまった事に気付かれ、瞬時に心境を悟られてしまう。
「すまん。おまえの反応が予想外だったのと、よくよく考えれば恥ずかしい事を言ったと思い返してな」
気持ちを上手く制御出来ないのは、浮かれている証拠だ。
「言ってから気付くとか……ゲオルグ殿って、案外抜けてるんですね?」
「たまに、フェリドにも同じ事を言われるが……俺としては心外だな」
「えー。もっと自覚した方がいいですってー」
隣を歩くカイルの笑顔は普段よりも幼く感じる。今は心を一切取り繕わず、心からの感情を見せてくれているのかもしれない。これも全て気のせいかもしれないと承知で思う。認めるしかない。思えば思うほど、ゲオルグはカイルが好きだと気付かされた。

――――――――――

 

ゲオルグを好きだと囁くカイルに、心を強く掴まれたような感覚に陥る。この男を気持ちよくさせたい。今まで寂しい思いをさせたに違いないその心を、少しでも埋めたいと願う。彼の為という気持ちに偽りはないが、何より自分が相手を欲していた。呼吸全てを奪ってしまいそうになるほど、容赦なく口づけを繰り返す。
身体はすっかりその気になってしまっている。好きだと言われた事が引き金となってしまったのだ。当人も先ほど口にしていたが、先の事など一切気にせずに彼とこうして過ごすだけの時を望んでしまう。叶わないと理解しているからこそ、焦がれていた。ここには自分と彼しかいない。この瞬間だけは、本音を抱き続けても許されるだろう。
「っ、触り合ってるだけなのに……すごく、気持ち、いぃ……」
同意だと口で伝える代わりに、彼の首筋に舌を這わせた。
「ぁ、あっ」
カイルは控えめに喘ぎながら、ゲオルグの手中にある性器も震わせる。
「そろそろ……一度、出したい……かも」
望み通りにしようと、吐精を促すために性器を擦る手の動きを早めた。男の身体に触れるのは初めてだが、今も不思議と戸惑いはない。
「まって、ゲオルグ殿……このまま続けたら、オレ……っ」
こちらに身を委ねてくれていた彼から、初めて戸惑いの気配を察する。
「何か困る事でもあるのか?」
一度、手を止めて率直に問うと相手は苦笑を浮かべた。
「こんな事……言うのも、今更なんですけどね……。このまま続けたら、あなたの手に出しちゃいますよ?」
「出せばいい」
「即答ですか……」
少しは戸惑うべきだっただろうか。仮にそう装ったとしても、上辺だけの言葉をかけたところで態度まで改めようとは思えない。
「おまえは何も気にせず、感じてくれていればいい」
本心を述べただけだが、何気ない一言は相手の頰を赤く染めた。その顔を愛らしいと言えば、こちらにその気はなくとも相手を茶化していると思われるかもしれない。たった今浮かんだ考えは、心の奥底にしまい込んだ。
「どーしよ……」
「ん……?」
他に何か、問題があるのだろうか。大切なものを見落としているかもしれないので、引き続き様子を窺う。
「いや、大した話ではないんです。……いや、わりと重要か。あー、でも……それこそ今更だしなー……」
何やら彼は、脳内での自問自答に頭を悩ませているようだ。本人は必死な様子だが、表情を次々変えるその仕草も愛おしいと思わずにはいられない。口にはせず、胸中に留める。
「すみません。中断させちゃって……」
「気にするな。納得がいくまで考えればいい」
「ずーっと納得がいかなかったら、ゲオルグ殿もオレもお預け状態になっちゃいますよね。それはイヤだなー」
彼の言葉は一理あるが、それでも己の意思は変わらない。この男の心に突っ掛かりがあるならば、それを解消したうえで行為に及びたかった。
「よし。考えてるだけじゃ時間が勿体ないし、さっさと言います」
「そんなに簡単な話なのか?」
たった今まで、戸惑いを匂わせていたからこそ問う。当人はその気配を感じさせず、迷いのない様子で言葉を続けた。
「思えば、そうでした。考えるのは一人でいる時も出来るけど、あなたとこうしていられるのには限りがある……」
強い意思が込められた眼差しは、息を呑むほど美しい。
「この瞬間も、どんどんゲオルグ殿が好きになってる。……ほらね、今更でしょ?」
「おまえが今更と思っていたとしても。何度も口にしてくれるのは嬉しい……」
心からの思いを込め、彼と目を合わせたまま囁いた。
「それはオレも嬉しいですね。じゃ、これからもどんどん言わせてもらおーっと」
穏やかに語るカイルは腰を動かし、ゲオルグの手中にあるそれの大きさを増した。
それが吐精の合図だと判断し、こちらからも手淫でそれを促す。直後、手中に精が放たれた。うっとりとした表情に見惚れていると、カイルの両手がゲオルグの性器に絡められる。不意打ちともいえるそれに驚く。相手は得意気な笑みを浮かべていた。
「オレだけイクのは、不公平だから……」
勘のいい相手は的確にこちらを追い詰めていく。心境は特に隠そうとせず、息を深く吐いて彼に任せた。
「よかった。ゲオルグ殿、ちゃんと感じてくれて……」
「当然、だろう?」
勢いのまま言葉にしたせいか、やや語気が荒くなってしまう。現に、この男を驚かせてしまった。手の動きが止まった事で察する。
「他でもない、愛しいおまえが相手なんだ。感じないわけがない」
彼の頭を撫で、余裕の無い理由を伝えた。
「嬉しい事、言ってくれちゃってー。もっともっと、喜ばせたくなる……」
「カイル……?」
何を思ったのか、カイルはゲオルグの性器から手を離す。どうしたのかと問うより先に彼は自らの顔を、こちらの股ぐらに埋めた。浮かんだ予感は即座に確信となる。口淫を施され、それまで以上に強い悦楽に脳内が支配された。
「下手だったら……ごめんなさい……」
大胆な行動の割に、その言葉はとても控えめだ。先端を彼の唇に食まれ、指で触れられた時とは明らかに違う感覚が背筋を走る。下手なわけがない。言葉にする代わりに、彼の頭を緩やかに撫で続ける。
「ん……」
顔をあげた相手は嬉しそうに笑む。気をよくしてくれたのだと悟った。先端のみがくわえられていた状態から、少しずつ性器が口内に飲み込まれていく。根元の膨らみは彼の手に包まれ、程よく揉まれる。
的確な愛撫は性器の大きさを増していく。深く息を吐いて身を委ね続けるが、一つ気掛かりがあった。
「っ……?」
懸念していた通り、それが大きさを増した事でカイルが息を詰まらせて戸惑う。
苦しい思いをさせてしまっていると聞かずともわかる。これ以上続けられれば、更なる負担を強いてしまう。
「カイル……無理はするな」
腰を引いて口内から性器を抜こうとするが、それは許されない。両腕で力強く、腰に抱きつかれている。
「おい……っ」
思いの外、力が強い。このまま続けてしまっていいのか。とてもではないが気が引ける。やはり、続けるべきではない。考えが揺らぐ事はなかったが、こちらを見上げる当人も考えを変える気はなさそうだ。この間も性器は大きさを増し、相手の口内を圧迫していた。
「苦しいだろう? ……離せ」
「……」
相手は笑みを浮かべるのみである。こちらの要求を受け入れるつもりは無さそうだ。それまでよりも強い力をもって彼を引き剥がそうとするが。カイルの舌が己の弱い箇所を強く刺激し、身体の力が抜ける。この男に主導権を握られている現状から打開は出来ず、最後まで抗い続けるもゲオルグは相手の口内で精を吐き出してしまった。
「っ……!」
それまで以上に驚いた様子を見せつつも、カイルはゲオルグの腰に抱きついたまま口を離そうとしない。
「カイル……、そこまでしなくていい……」
とは言っても、聞き入れてはくれないと気付いている。喉をわずかに鳴らした後で、ようやく性器を解放された。
「イヤでしたか……? オレ、気なんて遣ってませんから」
こちらを多大に喜ばせようとしたわけではないのか。もちろんその思いも抱いていたに違いない。異性を好んでいる男が、自ら望んで男性器を口にするとは思えないからだ。
「まったく……何処まで俺を惚れ込ませたら、気が済むんだ?」
「そうだなぁ……一生、気が済まないかも」
悪戯めいた表情が可愛らしい。そう感じる自分は手遅れなのだろう。
「望むところだ」
頰に張り付いていた彼の髪を耳にかけ、もう片方の手で唇を数回撫でる。カイルはすぐに順応し、指先に舌を這わせた後で吸いついた。
「……オレを、抱いてくれるんですね?」
口を離した直後、問われる。
「おまえが受け入れてくれるなら」
「愚問ですよー。オレの全部、あなたのものにしてほしいな……」
その返答に、心から甘えさせてもらおうと決める。
「ここ、使うんですよね」
相手は再びゲオルグの指を貪りながら下履きを全て脱ぎ捨て、自らの後孔へ手を伸ばした。
「あぁ。だが……」
「……?」
そこに触れようとした彼の手を掴んで阻止する。性器をくわえられていた時とは違い、今度は思うように行動出来た。
「そこを慣らすのは、俺がやりたい」
彼だけに任せるのは性に合わない。拒絶される事態も考えたが、その心配には及ばなかった。
「じゃあ、甘えさせてもらおうかな……そーだ。それなら……」
カイルは体勢を変えて背中を見せた後、腰をあげた。両手は自らの尻を掴んで広げ、固く閉ざされたそこをゲオルグの目前に晒す。こちらにとって喜ばしい態度とも言えるが、相手に無理を強いているのではないかと思わずにはいられない。しかし、それを問うのは相手の意思を踏みにじるも同然だ。
「こんな感じ、ですかね?」
「あぁ」
躊躇いなく、そこへ顔を埋める。
「え、なに……、うそ……っ」
口淫の礼と言わんばかりの行動であったが、戸惑いを感じられる声があがった。
「嫌か?」
顔を離し、代わりに指先でそこを撫でながら返事を待つ。
「オレは……そうじゃない、けど……ゲオルグ殿は、そんなところに顔をつけて……いいのかなって」
「先に人のものを口に含んでおいて、それはないだろう?」
考えるよりも先に、言葉となった。
「……確かに」
顔は伏せられたままなので表情は窺えないが、恐らく苦笑しているのだろうと察した。相手が拒絶をしていないとわかり、安堵した後で改めて顔を近付ける。尻を掴んでいる彼の手に自分の手を重ねると、強張っていると気付いた。
「嫌だと感じたら、すぐに言え」
彼を常に案じながら、舌で閉じられたそこを撫でる。
「っ……!」
それまで以上に身体が強張った。しかし、拒絶までには至らない。わずかな変化を見逃さないよう注意し、指と舌で解していこうと試みる。
「痛むか……?」
「だい、じょうぶ……です、けどっ……変な、感じ……」
それも、気を遣っての言葉ではないだろうか。無理をさせているのは承知なので、そのように考えてしまう。だが、ここでやめるわけにはいかない。今は大丈夫と言われているのだから、信じるべきだ。
「すまん。無理をさせる……」
指を浅く埋める。挿入したそれは相手の内に拒絶され、押し返された。
「こっちこそ……手間、かけさせちゃって……すみません。でも……」
力を抜こうとしてくれているカイルは、まだ何かを言おうとしている。察したゲオルグは再度指を挿入させながら耳を傾ける。