夏コミ新刊サンプル

*R-18 18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さいますようよろしくお願いいたします。
半獣人化。
サークル相方えのもと様原案の素敵パロディを小説として書き下ろしました。
とある森で暮らす二人の日常風景。

朝の目覚めもそれほど寒さを感じず、穏やかな気候の訪れを感じる。ようやく暖かくなってきた。その話を交えながら、昨日ゲオルグと翌日は食材調達に出かけようと話していた。
身支度を進めようとしたところでカイルは自らの異変に気付く。厳密に言えば起床時からその片鱗は感じていた。気のせいであると思いたかったが、そうともいかない。発情期が来てしまったと認めざるを得なかった。
「顔色も優れないままだな?」
ゲオルグは幸いカイルが単に体調を崩しているだけだと判断しているようで、今朝から気にかけてくれている。
「すみません……」
普段であればもう少し気の利いた言葉を掛けられるはずだが、今はその一言を伝えるのみで精一杯だ。俯き、自らの足元を見つめる。ゲオルグを直視出来ない。
「謝るな。今日は俺が一人で行く。おまえは一歩も外に出なくていい。休め」
視界にゲオルグの足が入る。こちらに歩み寄られて息を呑む。その直後、頭上に何かが置かれる。彼にそこを撫でられていると確認せずともわかった。抱かれているわけではないのに、まるでその時のようにこの男の声が脳髄に響いているような錯覚をしてしまう。
この状況はとても苦しいがカイルは安堵していた。ただの体調不良のままを通せば、これ以上彼に心配をかけずに済むからだ。ゲオルグ一人に食材調達を任せてしまう心苦しさよりもそれが勝っている。
今はせめて一言、彼に礼を述べなくてはと震える唇を開こうとする。思いをうまく言葉に出来るだろうか。その声で彼がこちらの異変を察してしまったら。それらの恐れによりカイルは唇を噛んだ。
「承諾してくれたのなら着替えて寝ていろ。俺は準備が出来次第、勝手に出ていく。見送りの必要も無いからな」
視界からゲオルグの足が消え、気配が遠ざかる。彼に飛び掛かりたい衝動を何とか抑えてカイルは寝床に重い足取りで向かう。欲情している事を悟られないよう息を潜めながら靴を脱ぎ捨てた。しかし寝間着には手を伸ばさず、そのまま寝床に身体を預けて掛け布を頭まで被る。
まさか自分が発情期であるとは気付かず、ゲオルグはカイルの具合が悪いのだと今も尚疑わず判断して気遣ってくれていた。その事実もまたカイルの情欲を煽り立てる。
(ゲオルグ殿……優しい、っ……好き、大好き……欲しいっ……)
いよいよ本能には抗えず、カイルは片手を自身に伸ばしていた。衣類越しに握ったそこは布越しでさえ濡れ始めているとわかる。まだ、駄目だ。ゲオルグが外に出て行ってからではないと今度こそ相手が何かを察してこちらに来てしまうかしれない。
ゲオルグが爪を切っている様子を耳で感じながら、掛け布を口に咥えて息をそこにぶつける。
自身に手を伸ばしたい欲に抗い、うつ伏せで布団を両手で掴む。しかし下肢は更なる刺激を求めて自身を擦りつけようと腰が動いてしまっている。それまで以上に先走りが衣類を濡らす感覚すら気持ちがいい。
このまま達してしまいたいが、寸前で耐える。これ以上行為を進めてしまえば相手に悟られると恐れた。それも理由の一つではあるが、大元は別にある。極限まで耐え抜いた後の吐精による快感は相当のものだと期待している。それが大元だ。
程なくしてゲオルグの気配が遠退く。外に出て行ったと確信した後、シーツを掴んでいた片手を再び自身に移した。
「あっ、ああぁっ……――!」
待ち望んだ瞬間は確かに気持ちが良かったが、一度のそれでは事足りない。
(変な声、出たぁ……っ)
まるでゲオルグに抱かれている時のように声をあげてしまった事に戸惑う。しかしいつまでもそれについて考えている場合ではない。彼が戻って来る前に済ませておかなくては。余韻に浸ろうともせず、休む間も無く腰を高く上げて衣類ごと自身を擦りあげる。
あと、どれほど吐精すればこの熱は収まってくれるのだろうか。一抹の不安を抱きながらカイルは自慰に没頭する。繰り返していれば波はその内去ると信じていた。だが実際はそうともいかない。
今までとは状況が違う。一人きりで過ごしていた頃以上の悦楽を知ってしまっている現状では満足出来ないと薄々思い始める。それが事実だとしても、ここまで耐えておいて彼に今更打ち明けるわけにはいかない。
自分は少し具合が悪いだけだというあの男の認識を覆す。それは何としても避けたい。しかし、本能はゲオルグを求めてしまっている。
(やだ、足りない……ゲオルグどの、っ……欲しい……)
胸中は本来の欲を呟き、性器を擦っていた片手を後孔に伸ばす。精液で濡れた衣類を脱ぎ捨てシーツに顔を埋めながら直に後孔へ触れようとする。ところが、長く伸びたままの爪に阻まれる。このまま力任せに事を進めてしまえばそこを傷付けてしまう。そうなるとゲオルグは気遣い故に抱いてはくれなくなるだろう。違う、自分は彼を心配させたくないだけだ。いや、彼が欲しくてたまらない。己では触れられないこの場所を彼のもので犯されたい。
思いが混濁しつつ、カイルはゲオルグに抱かれる様子を思い浮かべ始める。萎える事のないそれが新たな先走りを漏らして内股を伝う。
(もっと、気持ちよくなりたい……)
それが彼を心配させまいといった思いから、彼を欲しがる故の思いへと塗り替えられる。抗う余力は残っていなかった。

 

あれからどれほど時間が経ったのか。今のカイルはそれを気にする事無く、悦楽を貪欲に求めるのみに重点を置いている。
服は全て脱ぎ散らかし、片手がゲオルグの枕を抱えている。もう片方の手は今も自身に触れ続けていた。
「全然……っ、足りない……」
終わりの見えない欲はカイルを蝕み続ける。小脇に抱えている枕だけでは足りない。もっと彼を感じたい。うつ伏せのままカイルはゲオルグが普段身体を横たえている場所に顔を埋め直し、息を吸う。あの男の匂いを感じて後孔が疼く。
「ゲオルグどの……っ」
それまで以上に彼を感じられている瞬間を嬉しく思う。今ならゲオルグが傍にいると錯覚も出来そうだ。彼がこちらに手を伸ばし、汗と精液に塗れた身体を抱き寄せてくれる。その想像はカイルをまた吐精させた。
「あぁっ、ゲオルグ殿……もっと、いっぱい、感じたい……」
神経を研ぎ澄ませ、彼の存在を再現しようと思い描く。ゲオルグがこちらに歩み寄ってくる様子を上手く機能していない頭ではあるが考える。
充満している精液の匂いと自分の喘ぎ声。その異変に気付いた彼がこちらへ歩み寄る。我ながら明確に再現出来ているのではないかと思えた。
「カイル……!?」
そうだ。その声のように驚きながらもこちらを案じてくれている様子。声音までも細かく思い描けるとは。その声に応えようと思わず顔をあげる。しかしそこにはまだ誰もいない。そう思っていたのに。
「おい、どうした!? これは一体……」
あの声は想像ではない。実際にゲオルグが発したものだったようだ。心配そうにこちらへ歩み寄って来る彼の手が、こちらへ伸ばされる。この時をどれほど待ち侘びたか。
「やっと……帰って来たぁ……っ」
ゲオルグに抱き寄せられるその瞬間すら待てない。極限まで焦がれた本能により両腕を伸ばして彼に飛びかかる。
「……っ!」
突然の出来事に対応しきれなかったのか、ゲオルグはカイルを受け止めきれずに後ろへ倒れた。何かの転がる音が遠くの方で聞こえた気がする。しかし今はそれよりもゲオルグを堪能したい。驚いた様子の彼を見下ろした後に装備を乱雑に外し、胸元へ顔を寄せて擦り寄った。肉付きのいいそれが心地良い。
「カイル……っ」
服ごと、尖り始めているであろう先端を口に含む。何故この男はここまで戸惑っているのだろうか。前戯は必要無い。そう訴えたいのかもしれない。都合のいい解釈だが、今は何だっていい。もっと明確に意思表示をすればいいだけの話だ。
「ゲオルグ殿ぉ……」
彼から一旦離れる。そして足を開く。相手を欲して収縮しているその場所を惜しげなく晒す。
「そうか……」
ようやくこちらの状況を把握してくれたのか、ゲオルグの表情から戸惑いが消えたとわかる。
「抱いて……いーっぱい、ゲオルグ殿を感じたい……んっ」
今度はカイルがゲオルグに組み敷かれ、見下ろされる。金の隻眼は明らかにこちらに対しての欲情を訴えていた。これから与えられるであろう最上の悦楽に期待が高まる。尾を振りながらこの男に身を委ねた。