スパーク新刊サンプル

*R-18 18歳未満の方の閲覧はご遠慮下さいますようよろしくお願いいたします。
ゲオルグ×カイル シリアス気味。本編開始前。ゲオルグがファレナ女王国に入国する前からその直後の時期。
ゲオルグが本当に信用出来る男なのかを確かめるため、カイルが彼に近付き心情を図ろうとする話。

話を聞けば聞くほど鋭さを実感する。この男はこちらの真意に気付いているのか。今まで以上に警戒を抱く。
「あなたはオレを過大評価し過ぎですよー。嬉しいですけどね? でも、参ったなー。どうしたら信用してもらえるんだろ」
引き続きゲオルグの太腿を撫でながら次にかける言葉を考えていた時。一つ、浮かんだ事がある。それはとてつもなく衝動的なものかもしれないが、同時に利点も存在すると思えた。
「オレを、信じてくれませんか」
それは口先だけの言葉だ。実際はゲオルグを陥れようとしている。その一言だけではさすがに律儀な様子の彼もすぐには頷かず、何かを考えている様子だ。
「うーん、やっぱさっきのは無しで」
「……?」
「信じてもらいたいんだったらオレが努力しないと駄目ですよねー。だから、さっきのは聞かなかった事にしておいて下さい」
少しずつではあるがそれまでよりも相手の考えている事が伝わってきている気がする。彼がこちらを好いているかもしれない。先ほどから抱いていた予感に利用価値を見出す。
「代わりに一つ……言ってもいいですか?」
「何だ?」
「教えて。あなたがどれだけ、オレを好いてくれているのか」
顔を近付けて相手の金眼を覗き込む。そこに映る自分の表情は思惑を押し殺して上手く取り繕えていた。
「あぁ、いい事を思いつきました。それを教えてもらうのがオレのお願いって事で」
自然と微笑みを浮かべて囁いた後。それまで何の動きも見せずにいたゲオルグの片手がカイルの頰に触れた。
「……今ならまだ、引き返せるぞ?」
その言葉から様々な思いが伝わる。こちらへの気遣いと、彼の欲。その腕をカイルが引けばゲオルグは容易く理性を捨てると目に見える。自分はこの男に試されているようだ。カイルもまた、己を試していた。異性にのみ興味を抱いていた自分が、男に興味を抱いている。相手の懐に潜り込むためといえど、少しの嫌悪感も持ち合わせていない事に驚く。何処までが許容範囲なのか知っておきたい。
「子供じゃあるまいし……ちゃんと考えて、責任をもったうえで発言してますよー」
少しの挑発を含め、カイルは両手をゲオルグの頰へ置いた。彼の体温が掌に伝わる。とても温かい。
「そうか。わかった……」
ゲオルグの吐息が当たるほどに顔を近づけられ、程なくして彼の唇がこちらの唇に重ねられた。まるで彼の性質をそのまま写したような口づけだ。こちらを欲しているにも関わらず、穏やかで優しいそれにカイルは戸惑う。そろそろわきあがってくると考えていた嫌悪が、全く感じられない。それについても驚く。
「随分と……可愛らしい口づけですね?」
唇が離された直後、率直な思いを告げる。
「いきなりがっつくわけにはいかんだろ?」
「えー……ゲオルグ殿はムードを大事にし過ぎですよー」
「それだったら、おまえの方がよほど大事にしそうだと思うが」
「相手が女の子だったらの話ですよ。そうだなー。オレだったら、こうしますね……」
今度はカイルからゲオルグへ口づける。自分はこの男に惚れているのだと暗示をかけ、柔らかな唇を食む。雰囲気や相手の状況を気にかける余裕がないほど彼を欲しているのだ。初めての状況ではあるが、それなりに上手く振舞えているはずだ。
「口、開けて……」
これだけでは足りない。もっと深く交わりたいと意を込める。こちらに従う彼の口内へ舌をねじ込んだ。耳の裏を撫でながら相手の舌へ自らの舌を絡める。ゲオルグもされるがままでは不本意なようで、後にカイルの舌へ吸いついた。
「ぁ……」
異性とでは感じた事のない快感がカイルを襲う。しかし完全に飲み込まれる手前で何とか踏み留まる。あくまでこれは相手を油断させるための手法に過ぎない。彼もまた、同じ事を考えているのかもしれないと予感する。策略を悟られないよう、この瞬間に酔いしれているように振る舞う。
「もっと……」
必死に言い聞かせているとはいえ、自然と呟けた事にも驚く。
「あなたもオレも、男です。異性のように明らかな力の差があるわけじゃない。だから……ね?」
「そうだな……」
欲をそのままぶつけてしまっても構わない。こちらの思いを察してくれたのか、再度重ねられた唇から今までにない荒々しさを感じる。呼吸もろとも奪われるような口づけに、この男の情欲を感じる。考えを止めてはいけない。今も強く思うがそれに反し、思考全てを止めて目前の悦楽にのみ浸っていたい。嫌悪どころか、より彼を求めてしまっている事態にカイルは困惑する。それも全て必要な事である故だと思う。このままの状態では冷静な物事の判断は難しい。
今出来る事は、相手からも同じく理性を奪う事のみだ。自分だけがそうなっては遅れをとってしまう。彼の様子からは少なくとも感じてくれていると思えたので、それほど困難な手法ではないと確信する。口づけによる悦楽を受け入れながらカイルはゲオルグの身体に触れ始めた。
外套を外し、背中を撫でて腰へと手を移す。このままでの体制では少々動きにくいので、その場から立ち上がり彼の正面へ移動する。相手を抱きしめ、後頭部を撫でていた時。腰を下ろしたままのゲオルグが両腕を伸ばしてカイルを抱きしめ返す。
「こっち、いいですか?」
腰の鎧を外そうとしながら訊ねると、彼自ら外してくれた。再度抱きしめられたところで息を呑み、ゲオルグの股ぐらに触れる。そこが反応しているとわかり、カイルは目眩のような何かを感じた。明確に触れるより前に口づけだけでこのような事になっていたとは。愛しいと一瞬思うが、あくまで興に乗っているからこそだと考えを訂正する。実際に上手く割り切れているかは、正直不安だ。しかし今の状態の彼にならば粗末なごまかしですら、通用するだろう。
「もっと、ちゃんと……触りたいな」
自分の声が遠くから聞こえると錯覚する。ひどく興奮している故に先ほどからうるさく鳴り響いている心音のせいだ。まるで水底から相手の様子を窺っているような心境である。
「俺にも、触らせろ。このままだと思うように触れられん」
至近距離で囁くゲオルグの声すらも遠くに感じる。
「応えてあげたいんですけど……これ、着直すのは大変なんですよー……?」
本音と建前を織り交ぜて相手の反応を待つ。改めてカイルは今を楽しみ始めていると自覚した。
「それもそうだな……」
と、語るゲオルグは明らかに残念そうだ。意外とわかりやすい面もあるのかもしれない。この状況ではそれが偽りなのか真なのか、そこまで考えていられる余裕はないのでひとまず真と仮定した。
今の彼を見たうえで、その願いを叶えてやりたいと思う。油断させるのにも丁度いい。それが本心の内にどれほど占められているのか。そこまで考えられる余裕はない。
「そうだなー……ゲオルグ殿が脱がせてくれるなら」
少々意地の悪い提案とも考えたが、彼は思考錯誤しながらもこちらの鎧を外しにかかる。力任せに事を進められると思いきや、ゲオルグは器用にカイルの鎧と衣類を剥ぐ。口づけ同様、その指先からこの男の優しさを感じ取った。上半身を露わにされ、熱い視線に見上げられる。
真剣な眼差しでありながら、物欲しそうにしていた彼の片頰を撫でた。ゲオルグもその場から腰をあげ、カイルと同じ目線となる。
「……っ」
笑みを見せた後、彼の顔が自分の首筋へ埋められる。この男の熱い舌がそこに這う事に気をとられていると、髪を解かれた。頭頂から毛先をゲオルグの片手が丁寧に撫でてくる。彼が舌と手で触れている場所の全てが熱い。想像以上の悦楽がより興に乗りたいと思わせた。押し寄せる欲情に今は従おう。そうする事によって彼を信用させようと試みる。自らの性器がやや反応しているのも、上手く相手に合わせられているからこそと安堵した。
「っ……」
彼の掌に布ごと性器が包まれる。足元が溶け落ちてしまいそうな感覚に、思わずゲオルグを強く抱きしめた。
「オレも……触りたい……」
腰を動かしつつ、片手をゲオルグのそこへ伸ばして触れると容易く大きさを増した。
カイルは再びゲオルグをその場に座るよう促し、従ってくれた彼を寝台に組み敷く。相手の上半身も露わにして肌を寄せ合う。心音は今も変わらず、うるさく鳴り響いている。どちらからともなく唇を重ね合いながらゲオルグの性器を取り出し、直に触れた。
(うわー……おっきい……)
半勃ちの状態でこの大きさなのだから、これに貫かれる者はたまったものではないと他人事ながら思う。触れれば触れるほど大きさを増すゲオルグのものにカイルは息を飲んだ。
「カイル殿……」
頰を撫でられ、甘く囁かれる。
「はい……ゲオルグ殿」
相手の律儀な一面を真似て名を囁き返す。それもカイルを煽りたてる一因となる。
「どうしよ……すっごく、気持ちいい……」
紛れもない本心を言葉にすると相手が笑んでくれた。その表情もまた、とても気持ちのいいものだ。
「……俺もだ」
耳元で囁かれ、間もなく熱く柔らかな感触に包まれた。ゲオルグがカイルの耳を食んだ。彼の様子を窺おうとしながら相手の性器を擦っていた手の動きを早める。
「っ……!」
低く呻いた彼の声が脳内にまで響いているような気がした。
「っ、出すぞ……」
「んっ……オレ、も……」
ゲオルグが吐き出した精液によってカイルの手が汚れる。こちらも同じく相手の手を汚したのだろう。気怠くも心地良い感覚に身を委ね、ゲオルグに覆い被さる。異性ほどの柔らかさは感じられないが、この感覚は嫌いではない。本能の赴くままに再度ゲオルグの唇を自らの唇で貪る。熱に浮かされた今の内に彼を堪能しておこうと頭の片隅で感じていた。
「……まだ、足りん」
それはこちらに向けた言葉なのか。単に独り言なのか。どちらにせよ耳についてしまったのだから、このまま聞こえなかった振りを通すわけにはいかない。そう思えてしまうのは、自分もこの男と同じ気持ちであるからだと自覚している。
「欲張りさんですねー。ま、オレも同じ事を思っていたけど……」
いまだ吐精後の余韻に浸りつつカイルはゲオルグの肌を焦らすように撫でた。
「そうか。ならば遠慮は不要だな?」
口角をあげ、片目が細められた。その顔には見覚えがある。城下町の甘味処でケーキを食べていた時と同じような表情だ。
「嬉しそうですねー。思わぬデザートに喜んでいるみたいだ」
「あながち間違いではないが……」
言葉の途中、腕を引かれて今度は自分が彼に組み敷かれる。
「それ以上に興奮していると言っても、過言ではない」
「そりゃ光栄だ……」
今の自分は彼の好物である甘味同然どころか、それ以上という事なのか。吐き出した言葉が単なる出任せのみでないと気付く。ゲオルグに求められてカイルは悦んでいる。時間をかけた相手の愛撫はこちらの思惑も全て溶かされてしまいそうだ。首筋から鎖骨、胸を彼の指と舌が緩やかな速度で伝う。また反応しつつある自身に、早く触れろと口走りそうになる。そう簡単に主導権を全て委ねてやろうとは思わないカイルは、ゲオルグをその気にさせようと膝を使って彼自身を刺激する。
「こんなにしちゃって……って、オレも人の事は言えませんけどねー……」
「……安心した」
「女の子好きなオレが、こんなになってるからですか?」
「あぁ」
微笑み合った後、唇を貪り合う。それまでこの男の腹を探っていた事が嘘のようだ。同性相手でここまで気持ちよくなれるとは思っていなかった。今だけは策略も全て忘れ、悦楽を感じる事のみに没頭する。決して深みにはまってはいけないと同時に強く言い聞かせながら、今も施されている愛撫に声をあげた。