拍手お礼文3

ゲオルグと顔を合わせられない日々を過ごしながら、カイルが思いを馳せる話。

真夜中の本拠地を歩く。昼間は賑わっている各所も、今は静まり返っている。自分を含めた一部の見張り番は除かれるが、各々が身体を休ませていると実感出来た。
中にはじっとしていられないと、真夜中にも関わらず鍛錬に勤しむ者もいる。カイルはその者たちの取り締まりも兼ねていた。
時には休む事も必要だ。動き続けていては、いざという時に支障が出てしまう。
(気持ちは、わかるんだけどねー……)
休んでいると落ち着かないとの気持ちは、それなりにわかっていた。
動いていないと、どうにかなってしまいそうだ。休息を促した者たちは口を揃えて言う。その悲痛とも言える訴えも理解出来るからこそ、こちらも心苦しかった。
今は歩き回る事で気を紛らわせているが、見回りを終えたら自分も休息にもどかしさを感じるのだろう。理由をつけて長引かせる事は容易い。しかし、それではあまりに身勝手だ。他者を制止するような立場ではなくなる。
休息を拒みたいのは自分も同じだ。支障が出てしまっては本末転倒である。その考えによって、冷静を保てていた。
見回りを終え、今日のところは自分も休もうとする。周囲に気配が全くないと確認した後で、カイルはゲオルグの部屋に向かった。
彼は戻っているだろうか。淡い期待を抱いてしまうが、それは叶わないと言い聞かせる。今までそうであった時の方が、あまりにも多いからだ。
彼の部屋の前に立ち、静かにドアを開けた。やはり、部屋の主は不在だった。
(どうせ、戻って来てない。と、思ったらゲオルグ殿がいた。なんて、そんな上手い話があるわけないよねー)
当人にこの部屋は自由に使っていいと以前に言われた。なので、今日はここで休ませてもらおうとする。
鎧を外し、就寝準備をしながら部屋全体を見回す。最後に彼が帰還した時は、目前に見える長椅子に腰掛けてチーズケーキを美味しそうに食べていた。その時の様子は今も鮮明に思い出せる。幸せな雰囲気が伝わり、心を温めていた。恋しく思うがあまりに胸の痛みに悩まされる事態は、何度も経験しているが、当初よりは上手く付き合えている気がした。その思いばかりには囚われず、思考も止めずに冷静でいられるからだ。
では、そろそろ慣れたかと自問する。以前よりも恋しさは抑えられるようになったが、完全に順応してしまうのは本意でない。ゲオルグを思って胸を痛めるのも、愛しさ故。これも大事な感情の一つだとカイルは受け入れていた。