C102 新刊サンプル

本作表紙は同人表紙メーカー(dojin-support.net)にて作成しました。
ゲオルグ×カイル
題名どおりの話です。ゲーム本編開始前の時期です。

城下町のカフェに入り、ゲオルグは店員に案内された席に着く。空いている時間帯だったせいか、四人が座れる広い場所に通された。
「よかったですねー。ゆっくりできそうです」
ゲオルグの向かい側に座りながらカイルは穏やかそうに話す。その後、水の入ったグラスを運んでくれた店員に笑顔と共に礼を言った。
「そうだな。ここも、何度か来た事があるのか?」
率直に問うと、カイルは首を横に振る。
「初めてですよー。お話を聞いてただけです」
「本当におまえは、顔が広いな?」
「そうですかねー? けっこう、偏ってる気もしますけど」
カイルはテーブルに備えつけられたメニューを取り、ゲオルグの方を正面にして開く。さりげない気づかいができるこの男は、男女問わず好感を持たれそうだと常々思う。
(だが……男からの好意はおまえにとって、迷惑なんだろうな)
フェリドだけは例外だと確信したうえで、自分はカイルへ好意を向ける権利はないと自覚する。
「あ、そうそう。これですよー。このプリンが、とっても美味しいって評判らしいです」
「なるほど。これがそうか」
「オレも食べようかなー。飲み物は、いつものヤツでいいですか?」
「そうだな」
ゲオルグが好む飲み物までを把握してしまうほど、カイルは行動を何度も共にしてくれている。 興味の対象外である自分がこの位置にいられるのは、フェリドの友人という特権があるからだろう。
「いつも、すまんな」
店員を呼び、カイルがゲオルグの分も含めて注文を終えた後で声をかける。
「いえいえ。お気になさらずー」
と、彼は軽く返すが。気をつかわせてしまっているとの思いは覆せない。カイルはゲオルグよりも過ごしたい相手が、不特定多数いるはずだと考える。大切な時間を全てゲオルグに費やすのも、フェリドから何かしらを頼まれたからに違いない。
(おまえは、どこまでも忠実なんだな)
カイルには言葉だけの礼では足りないと思うが。男からの贈り物や施しなどは、かけらも求めていないだろう。
「本当か? フェリドから聞いた話だと、おまえは同性よりも異性と過ごす方が嬉しいはずだが」
あまりにも気になったので、当たり障りがないように軽く問う。声量を落とし、カイルにしか聞こえないように話す。いくら友人とはいえ、この国では騎士長閣下だ。そんな彼を堂々と呼び捨てにはできない。
「あー、それですか。今は大事な時ですからねー。フェリド様には迷惑をかけたくないから、ガマンしてるんですよー」
カイルの返答に心から納得する。万が一を考えて行動を選ぶのは、彼らしい判断だと思えたからだ。
「でも、わりと満足してるんですよ?」
「そうなのか?」
「はい」
深い意味がありそうな様子だが、それは気のせいだとすぐに気づく。この店内には周囲に沢山の女性がいる。声をかけるには至れないが、彼は現状に満足しているのだろう。
上機嫌なカイルを見て、ゲオルグは心を和ませると同時に愛しさを持つ。それだけで充分だった。